事故の原因が一つに限定できないケース

先日、リトルズで担当した交通事故の案件で事故の原因が複数あると判断されたケースをご紹介いたします。

この事故の被害者は自転車で走行中に後ろから車にはねられ、手首とひじの骨折などの重傷を負いました。自転車走行中に後方から車に衝突された、という状況だけを聞くと加害者車両の前方不注意の他に事故の原因などあるのかと思いがちです。NSW州ではまだ交通ルールの改正がなされていないものの、一般道では自転車と最低1メートル以上距離を置いて走行することが安全上の前提となっているため、このケースでも当初は加害者車両に全面的に責任があると考えられていました。

しかし、その後の調査により、被害者は車道脇の自転車専用レーンを走行していたのですが、前方にトラックが自転車専用レーンにはみ出るように停車されているのを見つけ、事故の直前はレーン右端の車道ギリギリのところを走行していました。さらに運が悪いことに、トラックの横を抜けようとしたその瞬間に運転手側のドアが開いたため、被害者はドアとの衝突を避けようとさらに右側に寄らざるを得なくなってしまいました。その結果、被害者は車道に少しはみ出てしまう状態になり、そのタイミングで後ろから衝突されてしまったことが判明しました。この検証結果は目撃者の証言とも一致し、事故の原因はどうやら一方的に加害者車両にあるとは言えないことが明らかになりました。

このケースでは実際に自転車に衝突したのが加害者車両である以上、加害者の過失、事故責任は否定できませんが、自転車専用レーンに一部重なるようにトラックを停車させ、さらには後ろから来る自転車に注意せずドアを開けた運転手側にも責任があるとされ、事故責任の6割が加害者運転手に4割がトラックの運転手にあると判断されました。

またこのケースでは、加害者車両とトラックそれぞれのCTP保険会社が過失割合に相応した形で被害者の補償を負担することとなりました。