派遣労働者の労災手続き

派遣労働者の労災手続き

 

Q: 現在、派遣会社を通じて働いているのですが、万が一派遣先の現場で不慮の事故に遭った場合でも正社員と同様の労働災害手続きの申請は可能でしょうか?

 

A: 昨今、様々な業界で派遣会社(Labour Hire Agency)を通じて働くという労働形態が一昔前より一般的になってきています。労働者の権利という点で、派遣労働者は正規雇用者に比べると利用可能な制度が少なく損をしていると思われがちですが、現行のQLD州の労災補償制度上は正規・非正規雇用者間で格差が生じるということはありません。特に派遣労働者が派遣先で負傷したり通勤途中に事故に遭った場合は、Statutory Claimと呼ばれる補償手当をワークカバー(WorkCover)に申請し医療費、リハビリ費、賃金手当などを受け取ることができます。Statutory Claimの手続きは怪我・病気の原因や雇用形態(正社員、契約社員、カジュアル)に関係なく全ての労働者が申請可能です。

 

但し、派遣労働者の受け入れ先に何らかの不手際や落ち度があり(例:安全用具の不備、機械の整備不良、劣悪な職場環境)事故が起きた場合は、派遣先に対して労働災害の手続きではなくパブリックライアビリティー請求と呼ばれる別の民事訴訟手続きを開始しなければいけません。簡単に派遣労働者と派遣先の法的関係をまとまると、派遣労働者と派遣先との間には直接労働契約が存在しないため、派遣労働者は派遣会社と派遣先が結んでいる労働派遣契約に基づいて労働を提供している第三者と解釈されます。従って、派遣先で事故が起き派遣労働者が負傷した場合、派遣労働者は派遣会社に労災法上の法的責任を問い、派遣先に対しては人身負傷手続き法に基づくパブリックライアビリティー請求を行い責任を問います。

 

実際に派遣労働者が働く職場を管理するのは派遣先、もしくは派遣先の関連企業であることがほとんどのため派遣先で人身事故が発生してしまった場合は常に上記の二種類の手続きの可能性を考慮しなければいけません。パブリックライアビリティー請求は相手側が派遣先だけでなく派遣先の提携会社や個別請負業者などが加わり、複数となるケースも多く、また手続きを開始できる期限が厳格に定められているので、きちんとした初期調査を行うことが重要です。