先月、シドニーの自転車愛好家団体が自転車事故の危険性を訴え、”Unsafe Cycle Lane”とペンキで自転車事故が多発している道路や自転車専用レーンに印をつけるキャンペーンを実施しました。このキャンペーンに限らず、あらゆるところで自転車通行者の安全を見直そうという動きが活発になっています。
この背景として、近年オーストラリア全土で自転車事故が増加しています。Australian Institute of Health and Welfareの統計によるとNSW州では毎年約3000件の自転車通行者の負傷事故が起きており、昨年は11名の自転車通行者が事故で亡くなっています。シドニー市内には車道と駐車スペースの間を白いペンキで仕切ったのみの自転車専用レーンが数多くありますが、時速60KM以上で走行する車と、いつドアが開くかもわからない駐車された車の間の1.5メートルほどのスペースを自転車で走行するのは、常に危険が伴います。
車と自転車が安全に道路を共有できるよう、NSW陸運局は制限速度が50KM以下の道路では自転車との距離を最低1メートル以上あけること、制限速度50KM以上の道路ではさらに自転車との距離を置くことを推奨していますが、1メートル以上自転車と距離をとらないといけない、というルールは現時点では存在しません。
一方、クイーンズランド州やACTではすでに交通ルールが改正されており、制限速度60KM以下では最低1メートル以上自転車と距離をあける、制限速度が60KMを超える道路では最低1.5メートル自転車との距離を置くことが義務付けられており、これを違反した場合は減点や罰金が課されます。サウスオーストラリア州では同様の交通ルール改正が確定的で、NSW州でも交通ルールの見直しが期待されています。
他州の交通ルールや自動車通行者の安全をより重視する傾向を受け、自転車の転倒事故で実際に自転車と衝突していなくても転倒につながる動作がある場合(自転車に車を寄せる、安全な距離をとらなかった、など)、車の運転手が転倒事故の責任を問われるケースが増えることが予想されます。