従業員のセクハラと雇用主の責任について

近年、雇用主が従業員によるセクハラ行為の代位責任を負うことを再認識させられる判例が続いています。NSW州の判例では、ナイトクラブ勤務の男性スタッフによる、同僚の女性バーテンダーへのセクハラ行為について、クラブ経営者側に代位責任があると判断されました。

このケースでは、男性スタッフが被害者の胸を触る、胸について言及するという行為が少なくとも三回はあったとされ、被害者が三回目の被害を受けた後、経営者側に正式な被害届を提出しました。翌日、経営幹部は加害者男性スタッフを問いただし、そのような行為に及んだことを本人が認めたため、そのスタッフは直ちに解雇されました。

その後、経営者側は全スタッフ宛に当社はセクハラ行為を禁ずる・認めないという通知を行い、被害者にはカウンセリング費用等が支払われました。被害者の女性はその後、行政裁判所にセクハラ被害の訴えを起こし、最終的に精神的な苦痛に対して$15,000の損害賠償が認められました。

NSW州の反差別法では、被雇用者(従業員)による反差別法に違反する行為がある場合、雇用主も同様に違反行為を犯したとみなされます。ただし、雇用主は被雇用者による違反行為が起きないよう全ての合理的な手段を講じていれば、その責任は問われないという規定があります。
裁判所は、クラブ側はセクハラ行為が再度起きないよう全ての合理的な手段を講じたことを認めつつも、正式な被害届が出されるまでは十分な対策を取っていなかったとして、クラブ経営者側に代位責任があると判断しました。特にマネージャー数人は加害者の男性スタッフが以前からそのような行為を行っていたことを知りながら経営者側に報告しなかったことから、セクハラが違法行為であるという認識の欠如、経営者側のセクハラ・差別に関するルールの不徹底、という点がこの判決に至るポイントとなりました。

オーストラリアでは各州で同様の反差別法の規定が設けられており、セクハラには加害者当人だけでなく加害者の雇用者にも厳しい罰則が課せられますので、雇用者の皆様にはこういったことが起きないよう、未然に防ぐ手立てを是非講じて欲しいと思います。