NSW州の労災の訴えについて

前回、NSW州で労災にあった方はStatutory ClaimとCommon Law Claimの二種類の請求があるということに簡単に触れました。今回はCommon Law Claim(労災の賠償請求)がどういった手続きか説明いたします。

・過失によるケガ
雇用者の過失により職場でケガをした方は雇用者に対し損害賠償請求の訴えを起こすことが出来ます。ここで言う過失とは雇用者に何らかの落ち度があることを意味し、これには例えば、職場の設備の安全基準が満たされていない、作業員が作業の注意事項や説明をきちんと受けていない、安全用具が配備されていないなどが挙げられます。またここで言うケガの典型的なものとしては骨折やじん帯の損傷、腰痛や背中の痛みなどに見られる捻挫や同じ動作や作業を繰り返した結果の負傷などが挙げられます。

・ステップ1
NSW州の労災規定上、15%以上の後遺症があると判断された労働者のみこのCommon Law claimの手続きを取ることが可能です。まだ後遺症診断が行われていない場合はWorkCoverに後遺症診断のリクエストをします。

・ステップ2
労災でケガをした労働者はケガを負った日(事故があった日)から3年以内に労災請求の手続きを開始しなければいけません。労災にあった方が手続きを開始するためには、まずWorkCoverに請求通知書を届け出ます。この請求書の記入と提出には専門知識が必要となるため通常弁護士が行います。WorkCoverは請求の通知書の受け取りから14日以内に請求が有効かどうかを請求者に知らせます。

・ステップ3
請求が有効と判断された場合、WorkCoverは原則2ヶ月以内に労災の被害者に事故責任の通知を行わなければいけません。この期間にWorkCoverは本当に雇用者側に過失があったかどうか、あったとすればどの程度のものか、また労働者側にも責任は無かったのかといった点を調べます。この調査に基づきWorkCoverから和解金の提示を受ける場合もあります。

・ステップ4
その後、両者は労災法で義務付けられている協議・調停を行います。この話し合いの結果、和解に至らなかった場合WorkCoverと労災被害者の両者はそれぞれ最終的な和解金の提示をします。それでも和解に至らない場合は裁判所を通じて更なる手続きを開始します。

・Statutory ClaimとCommon Law Claimの違い
Statutory ClaimとCommon Law Claim の決定的な違いは前者は労働者がケガをした際に受け取ることができる手当の申請であることに対して、後者は雇用者の過失が原因によるケガに対する賠償金の請求だということです。よって前者は支給額も必要に応じて考慮されますが、将来的な損失や必要となるであろう医療費、リハビリ費用、ケアの費用、その他雑費等も請求対象となります。注意すべき点は、一度和解のオファーに同意するとその後請求を起こす権利が失われてしまう場合があります。場合によっては前者と後者で和解金の提示額が20倍近く変わることもあるのでWorkCoverから和解・示談のオファーがあった場合は早急に専門家のアドバイスを受けるべきだと言えるでしょう。