ワーホリ滞在者が知っておくべき権利(クイーンズランド州)
毎年クイーンズランド州には何千人ものワーキングホリデイメイカーが日本から訪れます。そのうちのかなりの割合の人が主にセカンドビザ申請の条件を満たす為に、ファームでの仕事、いわゆるピッキングに行っています。今回はワーホリの方々がクイーンズランドで労働するとき、特にピッキングやファームで仕事をする際に知っておくべき権利について触れたいと思います。
カジュアルやパートタイム・フルタイムなどの勤務形態に関わらず、ワーホリの方々にはオーストラリア市民や永住権保持者と同等の労働者の権利が与えられています。これが意味することはワーホリだからという理由で不当に解雇されたり労働災害の手当てが下りないようなことがあった場合は、クイーンズランド州の法律により定められた権利を行使することができるということです。
- ワーホリと労災
労災についてワーホリの人が特に知っておくべきことは、ワークカバー(WorkCover)という機関を通じてStatutory Claimと呼ばれる、怪我の原因に関わらず労働中や通勤途中に怪我をした際に申請できる手当てが存在するということです。この手当てには賃金手当て、治療費、交通費、リハビリの費用などが含まれ、労働者であれば誰でも申請できる権利を持っています。 ワーホリの方々の悩みのひとつとしてよく耳にするのが医療費に関するものです。実際に「海外旅行保険に入っていないので病院に通えない」、「現在セカンドワーキングホリデイビザでの滞在で、すでに海外旅行保険が切れてしまった」という読者もいるかと思われます。ひとつ言えることは、例え海外旅行保険に入っていなくても、上記のように通勤途中に事故にあった場合や、労働により怪我を負った場合はワークカバーを通じて補償手当ての申請ができるということです。補償手当てを申請するメリットとしては、手当ての受給により、働けなくなったことから生じる金銭的な負担も減りますし、さらには怪我を負った直後から自己負担ではなくワークカバーによる負担で病院に通ったりその他の適切な治療を受けることが出来るようになります。
労働災害に対する権利はクイーンズランド州全ての労働者に等しく与えられている権利であり、雇用者は労働者に何かあったときは労働者がきちんとワークカバーによる補償制度を利用出来るようにしなければいけません。ピッキング労働者を必要とする多くのファームは労働基準を守り、労働者に何かあったさいにはきちんと対応していますが、中にはワーホリ滞在者がこういった制度を知らないことや言葉の障害をいいことに、ひどい扱いをしているところもあるようです。ワーホリ滞在者の皆様にはこういったことが起こりうることを理解し、万が一、そのような目に自分があった場合には自分がどのような権利を持っているか是非知っておいてほしいと思います。
- ファームでの交通事故
QLD州には各地域にワーキングホリデイメイカーを中心とするバックパッカー滞在者にピッキングの仕事とファームまでの移動を提供するホステルやバックパッカー宿があります。この宿からファームまでの移動はほとんどの場合、ミニバスやヴァンに乗りグループでの移動となりますが、昨今頻繁に起こっているのが、ピッキングの労働者を乗せたバスやヴァンが交通事故に逢い、多数のワーキングホリデイメイカーが同時に負傷(中には死亡)するという事件です。こういった事故が絶えない理由としては主に年式が古く整備が行き届いていない車両が移動用に使用されていたり、道路が整備されていない、ドライバーが大型車両の運転に慣れていないなどの実情があるようです。このような事故に関して、まずはっきり言えることは事故が単独であろうと複数の車両が関係していようと、同乗者は全員事故の被害者であるということ。そして、事故の被害者は負傷した場合、適切な治療と妥当な補償を受ける権利があります。QLD州の交通事故保険法に基づき、被害者は事故車両が加入している強制保険会社に対して治療費や所得の減少分(過去と将来)、またその他諸費用を請求することができます。ひとくちに「保険」といっても交通事故の傷害に関する(1)強制保険会社に対しての請求 と(2)海外旅行保険がカバーする医療費の請求 とでは大きく対象となるものが異なります。(1)は過去・現在の治療費はもとより、将来における所得の損失や医療費も考慮されるのに対し、一般的に(2)は海外旅行保険が有効な期間に発生する医療費だけが対象となります。つまり、オーストラリアで起こった事故が原因で後遺症が残ったり、将来に悪影響を及ぼすことがあっても海外旅行保険では将来に対する十分な保障はありません。
もちろんワーキングホリデイを利用してオーストラリアに来ている方々がこのような事故に巻き込まれないことに越したことはありません。しかし、もしもの時には自分にどういった権利・選択肢があるのか知った上で熟慮し、後から「あのときに知っていれば」と悔やむことがないよう賢明な判断を下してほしいと思います。