先日、フェア・ワーク・コミッション(FWC)は人材派遣会社が正当な理由なく、然るべき手続きを踏まずに派遣労働者の派遣を中止した場合、不当解雇となる判断をくだしました。今回は少しこの判例をご紹介したいと思います。
背景
Kさんは人材派遣会社のA社を通して、N社でカジュアルで平均週38時間以上の勤務を約2年半継続していました。勤務期間中、A社とN社ともにKさんの勤務態度や勤務中の行為について問題があるということをKさんに伝えたことはありませんでした。
N社はKさんが自分と他数名のスタッフのタイムカードを不正に記録した行為があったということを理由にA社にKさんの派遣を中止するよう要請しました。A社はN社の要請を受け、すぐにKさんをN社に派遣することを辞めました。A社は別の派遣先を探すとKさんに伝えていましたが、結局次にKさんが派遣された勤務先はKさんの職歴に合うものではなく、また計3日の短期の派遣でした。
A社が一向に新しい派遣先を見つける動きがないことを受け、Kさんは人材派遣会社のA社に対して不当解雇の申請を開始しました。FWCはA社がきちんと事実確認を行わずN社の要請だけで派遣をとりやめたこと、N社からの要請があった場合すぐにKの派遣が終了する可能性のある雇用契約であったことを明確にした契約書等がなかったことから、A社の不当解雇を認めました。
人材会社が注意すべき点
この判例により、人材派遣会社は派遣労働者を解雇する(派遣を終了する)ときや派遣労働者を他の仕事先に派遣しないときは、不当解雇の訴えを起こされるリスクがあることが確認されました。今回の判例から、人材派遣会社は以下の点に気を付けるべきでしょう。
派遣労働者との雇用契約の性質や関係性を明確にした雇用契約を渡すこと。
派遣先での不正行為やその他解雇につながる主張があった場合、公平に事実検証を行う。
解雇に当たり正式な手続きを踏んでいること― 不満足な成績への注意、派遣労働者に解雇理由の通知と返答をする機会を与える、解雇の話し合い時に派遣労働者が第三者にサポートを要請した際は同行を許可するなど。
派遣先の雇用主と緊密な関係を築き派遣労働者の規律や処分に関連する問題に関して対処できるようマネージメント体制を整ておく。
派遣労働者の新たな派遣先を積極的に検討する。