統計で見る交通事故

統計で見る交通事故

プライベートや仕事で自動車を所持されている方は近年、車の登録料が著しく高騰してい
ることにお気付きかと思います。事実、登録料はここ数年上がり続けており、これには強
制加入(Compulsory Third Party)保険の掛け金が上がっていることが多分に関係していま
す。今回はクイーンズランド州の Motor Accident Insurance Commission による統計1をも
とに損害賠償と交通事故の実態がどのように自動車を所有する個々人と結びついているか
考察したいと思います。

・CTP保険の掛け金 CTP保険の掛け金
まずクイーンズランド州でCTP保険を提供する大手6社の掛け金を比較してみると、
2007/2008 年度の平均的掛け金が最も低いもので$259.30、最も高いもので$272.00 となっ
ています。これが 2010 年度には平均の掛け金が$344.00 から$345.25 となっており、各保
険会社間での掛け金の差額はほぼ無くなっていますが、掛け金が一様に上がっていること
は一目瞭然です。

・保険会社への請求件数
次に保険の掛け金が上がっている背景として、クイーンズランド州全体で交通事故の数が
増えているため保険会社への請求も増えているのではないかということが考えられます。
統計では 1998/1999 年度の 11,349 件を境に交通事故に関する請求件数は年々減少し、一昨
年度はおよそ半分の 5,850 件になっています。1998 年から 2010 年でQLD州内の登録車
両数が約 120 万台増加していることを鑑みると、請求件数が減っただけではなく請求に至
るレベルの交通事故が起きる確率が下がったとも言えます。

・支払金の推移
それではなぜ事故が減っているのに、CTP保険の掛け金は上がるのかという疑問が沸き
ます。この状況にはもちろん経済的な理由、オーストラリアが経験しているインフレーシ
ョンの影響もありますが、他に以下の要因が考えられます。

統計では 2006 年 7 月 1 日~2007 年 6 月 31 日の間に終了した人身事故の請求に対する保険
会社からの支払金の合計は$581,809,000 となっています。これに対して 2010 年 1 月 1 日
~2010 年 12 月 31 日の間に終了した人身事故事件への保険会社の支払金の合計は
$777,177.000 となっており、ここ 3,4 年で 30%超増えていることがわかります。Minor,
Moderate, Serious, Severe, Critical といった各後遺障害等級に対する平均支払金も全ての

1 http://www.maic.qld.gov.au/forms-publications-stats/pdfs/maic-stat-info-1jul-31dec10.pdf 等級で同様に支払い金が増加しており、Moderate 級の平均支払い額に至っては 2006/2007
年度の$75,272 から 2010 年には倍近くの$143,952 まで上がっています。

以上のことを踏まえると、人身事故による請求件数は減少傾向にあるが、一件あたりの支
払金が高額になってきているために結果的に保険会社の支払金が増え、それに比例して保
険の掛け金も全体的に上がっているという説明が出来ます。このように統計で見ると、ほ
とんどの人にはあまり関係の無い交通事故処理の実状が実際は見えない形で個人や各家庭
に影響を与えているということがお分かり頂けるかと思います。